UPCの最初の年次報告書

By Greg Ward, パートナー and Abbie Buckler, IP Paralegal

2023年6月に統一特許裁判所が業務を開始後、初めての年次報告書が公表されました。年次報告書には、同裁判所の初年度の活動、事件および主要な進展に関する重要な知見が示されています。今回の記事では、この年次報告書を検討しつつ、今後の流れを見ていきます。

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グレッグ・ウォード | Connect on LinkedIn gward@hlk-ip.com

アビー・バックラー Connect on LinkedIn abuckler@hlk-ip.com

UPCは当初から多忙を極め、業務開始初日から2024年12月31日までに633件の訴訟を受理しています。ミュンヘン地方部は侵害訴訟の件数が最も多く、2024年に53件の侵害事件が提起されました。パリ中央部は、全ての支部の中で取消請求事件が最も多く、2024年に21件が提起されています。2024年にUPCが最も忙しかった月は6月、7月と12月でした。

取り扱う訴訟件数が多かったおかげで、同裁判所は一貫した判例法を構築し始めており、年次報告書にはいくつかの主要な判決の要約が参考として示されています。

訴訟件数の増加に伴い、裁判官の勤務時間も増加し、対応可能な裁判官を増員するために2023年と2024年に人材募集が追加されました。技術系裁判官は、2023年から2024年に68名から75名に増えました。また、法律系裁判官も同期間に35名から41名に増えています。年次報告書は、裁判官の研修が優先事項であることに加え、同裁判所の各支部における業務量の配分を調和させる目標を強調しています。

事件が終結するまでの平均期間は、種類によって異なります。侵害訴訟は平均で405日を要するのに対し、取消訴訟は概ね383日で解決されていました。デンマーク、フランスおよび米国の原告が最も積極的な反面、日本、米国およびデンマークの被告が最も多く見られました。

UPCは将来を見据えて、利便性と手続の効率性の大幅な改善を計画中です。同裁判所は欧州特許庁と協力し、登録簿の透明性の改善とデジタル事件処理の合理化に向けて、2025年半ばまでに新しい事件管理システムの運用開始を目指しています。特許調停仲裁センターの設置も視野に入れ、運営維持のための職員の募集と研修活動を継続しています。

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この記事は一般的な情報提供のみを目的としており、法的助言を構成するものではありません。この記事または統一特許裁判所に関連した他の話題について助言が必要な場合は、upc@hlk-ip.comまたは担当のHLKアドバイザーまでご連絡ください。